おくむら大腸肛門クリニック院長のブログ

岡山市の大腸肛門専門クリニックの院長のブログです。

いぼ痔はどのような人が手術になる?~「痔核は自覚で決まる」

いぼ痔の手術適応とは?

当院にはいぼ痔の方が多く受診されます。初診の方はまず患者さんにいろんなことを問診します。その時に、必ず皆さんにお聞きすることがあります。それは「いぼ痔がお尻から出てきたりしますか?出てきた場合、指で押して戻したりしますか?」という内容です。(当院のWEB問診にもあらかじめ入っています。)

これは患者さんのいぼ痔 (特に内痔核)の現在の程度(進行度)をお聞きしているのです。

 

いぼ痔には内痔核と外痔核の2種類があります。外痔核は表面が皮膚で覆われているものなので、もともとお尻の外にあります。なのでずっと出っ放しのものです。外痔核は急に腫れることもあります(血栓性外痔核といいます。)が、その場合も最近は薬で治療することが多いですね。時間がたてば薬で治っていくからです。

 

さてそれに対し、内痔核は手術になることもあります。それではどのような方が手術になるのでしょうか?

内痔核はお尻の奥にあるイボなので、皮膚ではなく腸の粘膜で覆われているものです。通常はお尻の奥に収まっています。ところが、内痔核が徐々に悪くなってくると排便時などにお尻の外にでるようになります。

この内痔核の進行度(進み具合)には分類があって、ゴリガー分類というものです。

全部で4段階あります。

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ゴリガー分類(マルホ製薬のホームページより)

1度:内痔核はお尻の中におさまっているままで出てくることはなく、主な症状は出血のみ。

2度:排便時にお尻からイボが出てくるが自然に戻る。

3度:排便時にイボがお尻から出てきて、自然には戻らないため、患者さんはおしりに物が挟まった感じの違和感が強く、痛みを伴うことも多いので、だいたい自分で押してイボを戻します。

4度:自分で押しても戻らず、出たままの状態。腸の壁が出ているので、粘液がついて下着が汚れたりします。

 

上記のように内痔核は、主に患者さんが自分で感じている症状(自覚症状)で分類されています。なので、問診でほぼ内痔核の進み具合が分かります。問診の後、実際の診察でその状態を確認するという手順になります。ちなみに、ある日突然内痔核が3度になるということはなく、内痔核が悪くなる場合は、数年かけて徐々に度、2度、3度と進んでいきます。「突然」イボが腫れて外に出たまま、なのは痔核の急性期である上記の表の「血栓性外痔核」か「嵌頓痔核」でしょう。

というわけで、普段から実際お尻からイボが出てきて、それを指で押したりする動作を日常生活でしていない人が「内痔核の3度」ということはまずありません。

そういう症状がないのに病院で、「内痔核3度で手術が必要」と言われた場合は、念のため一度他の専門医を受診した方がいいかもしれませんね。

そして、内痔核の治療は一般的にこのゴリガー分類の進み具合で治療方針がだいたい決まっています。上記の表に記載されているように、1~2度の方はまず保存的治療(投薬と生活改善)、3度~4度の方は脱出症状の改善には一般的には手術が必要になることが多いです。3度以上の方は内痔核の土台(支持組織)が伸びてしまっている状態で、それは薬で改善することが難しいからです。

このように痔核の治療は患者さんの自覚症状で治療方針が決まる事が多いです。

これが「痔核は自覚で治療が決まる」と言われている理由ですね。(以前学会の痔の教育講演で聞いた言葉です。)

1~2度の方で手術をするとしたら、出血が主な症状で、薬を使用しても出血が止まらない場合ですね。この場合、出血を止めるのが目的なので、当院ではジオン注射をすることが多いです。

簡単にまとめると、

痔核の手術適応とは

・普段からイボを指で戻す動作をしている人(ゴリガー分類3度以上の方)

・痔の薬を使っても出血が止まらない人

になります。もちろん患者さんが手術に同意されていることが前提です。そしてある日突然腫れて出たままになった痔核は一般的には急いで手術する必要はありません。「3度や4度の内痔核」ではありません。急性期の痔核であり、通常薬で腫れが引いていくからです。腫れが引いてからの状態を見て、手術するかどうか判断したらいいものです。これらは肛門疾患診療ガイドラインにも記載されている内容です。

ただし、痔の治療方針は病院によっては異なるところもあるかもしれません。それは医師による痔という病気のとらえ方の違いや、経営的な側面もあるのでしょう。ただ私としてはガイドラインに従った治療が間違いなく主流であると思っています。

痔は良性の病気ですから、当院では、自覚症状がないのに痔核の手術をお勧めすることはありません。

今回はいぼ痔の手術適応のお話しでした。それではまた!

 

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