おくむら大腸肛門クリニック院長のブログ

岡山市の大腸肛門専門クリニックの院長のブログです。

便秘は寿命を縮めます!~慢性便秘症のセミナーに参加

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先日、東京で開催された慢性便秘の治療に関するセミナーに参加してきました。全国から700人ぐらいのドクターが1つの会場に集合し、最新の便秘治療についての討論が行われました。なにせ大きな会場で、正面に3つの大きなモニター画面が並んでいました。なかなか壮観でしたよ。

一般的に便秘といえば癌などの病気に比べるとそれほど深刻なものとは認識されていません。ところが近年、便秘がQOL(生活の質)を下げるだけでなく、寿命を縮めることも明らかになってきました。2018年12月に発表された論文ですが、米国の中高年男性(330万人!)を対象とした調査によると、便秘患者と便秘ではない人々を比較したところ、便秘患者では、便秘のない人に比べて、約10~20%死亡リスクの上昇が認められたとのことです。全体の死亡リスクは12%上昇し、冠動脈疾患の発症リスクは11%、脳梗塞の発症リスクは19%上昇していました。これは便秘による腹満感などで食欲低下を招き栄養状態が悪化したり、排便時のいきみなどで血圧があがり、心筋梗塞脳卒中、寝たきりなどのリスクが高まる為と考えられています。

多くの医師は、慢性的な便秘を『治療が必要な疾患』と考えていない傾向があります。便秘の方が来られたら「とりあえず即効性のある刺激性下剤などを出して、あとはそのまま」という医師も多いのではないでしょうか。ところがこの刺激性下剤は常用すると癖になって徐々に効きが悪くなったり、大腸が黒く変色したりする副作用もあり、基本的には屯服で使用するべきお薬です。最近は常用しても癖にならず、安全性の高い慢性便秘に対する薬もたくさん出てきました。以前に比べると薬の選択肢がかなり増えてきて、便秘の悩みで来られる方が多い当クリニックとしては大変ありがたいことです。

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今回のセミナーではそれら新薬の使い分け方などが討論されて、中々勉強になりましたよ。当院ではアミティーザ・リンゼス・グーフィス・モビコールなどの新規便秘治療薬はすべて院内処方可能です。便秘のお薬を院外薬局でもらうと、薬剤師さんからの説明の時にちょっと恥ずかしいという方も多いですよね。

便秘の治療の最終目標は便秘薬を飲まなくても快便が出ることです。このため当院では便秘薬を出すだけでなく、腸内環境を改善させる薬の処方や日常生活上の便秘対策なども詳しくお話ししています。便秘でお悩みの方はぜひご来院くださいね。

それではまた~。

www.okumura-clinic.net